- 胆石・胆のう炎を防ぐ
- 肥満ぎみの中年女性に多い胆石は、ほとんどがコレステ一ル性結石が原因。低指肪のバランス食で防げます。
- 胆汁(bile)とは(学術向上予備知識編)
- 胆嚢炎(cholecystitis)とは(学術向上予備知識編)
- ビリルビンカルシウムはビリルビンとして説明します。ビリルビン(bilirubin)とは(学術向上予備知識編)
- 黄疸は胆石症や胆石発作および胆汁を含みますので、黄疸で説明します。黄疸(jaundice,icterus)とは(学術向上予備知識編)
- ステロイドは胆汁酸を含みますので、ステロイドで説明します。(steroids)とは(学術向上予備知識編)
- 胆汁および胆汁酸は腸とも関係しますので、腸で説明します。腸(intestine)とは(学術向上予備知識編)
胆石・胆のう炎を防ぐ
肥満ぎみの中年女性に多い胆石は、ほとんどがコレステ一ル性結石が原因。低指肪のバランス食で防げます。
症状:結石ができると激しい痛みも
症状の出ないサイレントストーン
肝臓でつくられた胆汁が、肝臓を出てから十二指腸に送られるルートを胆道といいます。
胆道は、胆汁を運ぶ水道管のような役割をする胆管と、胆汁をいったん貯蔵する胆のうという袋から成り立っています。
食事をすると、胆のうが収縮して胆管が開き、胆汁が一二指腸に流れ込むしくみになっています。
この胆汁の成分が何らかの原因で固まったものが胆石です。
年をとるとともにできやすくなり、特に肥満ぎみの中年女性に多く見られます。
胆石症では、腹痛や発熱、黄疸といった症状が見られ、なかでも腹痛は代表的な症状です。
しかし、サイレントストーンとも呼ばれるように、まったく症状の出ないこともあります。
胆のう炎を起こしやすくする胆石症
胆のう炎は、細菌が原因で、その発症には胆石が大きく関係しています。
胆汁の流れが滞ることによって、浄化作用が低下して、細菌が繁殖し始めるのです。
症状は、おもに腹痛や発熱などで、胆石症の場合と似ています。
突然、寒けや吐きけ、高熱に襲われ、右あばら骨の下あたりからみぞおちにかけて激しい痛みを感じます。
要因:高エネルギー、高脂肪の食生活
胆石のタイプは2種類ある
日本人の胆石症の70%以上は、コレステロールのとり過ぎによるものとされています。
高エネルギー・高コレステロールの食事を続けていると、胆汁に含まれるコレステロール量も増加し、そのため、過剰なコレステロールが溶かされないまま結晶化してしまいます。
栄養状態が悪過ぎても胆石を生じます。
低栄養や低タンパク質の状態が長く続くと、胆汁成分の一つが化学変化を起こし、ビリルビンカルシウムという結晶をつくってしまうのです。
肥満、ドカ食い、ストレスに注意
肥満の人は、胆石症から胆のう炎になりやすいといわれています。
また、早食いやドカ食いは、胆のうに大きな負担を与えます。
過度のストレスは、消化器全体を管理する自律神経の働きを乱します。
胆汁の通る胆道(胆管と胆のう)にはどこでも結石ができる。
低エネルギーのバランス食事を
食物繊維はたっぷり、揚げ物や生クリームなど脂肪は控えめに。
低脂肪の食材選びと調理法
高脂肪・高コレステロールの食事を続けると、胆石ができやすくなります。
コレステロールを多く含む鶏卵や魚卵、レバー類は控えめにして、肉は脂肪の少ない赤身肉を。魚は自身魚がおすすめです。
焼く・煮る・蒸すなど、油を使わない調理法を活用しましょう。
種類・部位・調理法によるエネルギーの変化(可食部70g当たり)
野菜を1日350gとって、食物繊維をたっぷり。
野菜はいろいろな種類を組み合わせながら、1日350g以上を目標にとります。
このうち緑黄色野菜を120gに。
食事のポイント
副菜:野菜類をゆでる・煮るなどの加熱調理で、量をたっぷり。
主菜:自身魚、低脂肪の肉、豆腐などを。揚げ物、炒め物は避ける。
主食:標準体重を維持できる量に。
もう1品:高脂肪の生クリーム、ナッツ類やアルコールに注意。
妙め物や揚げ物はなるべく控え、油の使用量を減らします。
蒸す、煮る、網焼きなどがおすすめ。
胆汁(bile)とは(学術向上予備知識編)
胆汁は、肝臓から十二指腸部に外分泌される黄褐色または緑褐色の透明な液体です。
胆汁は肝臓の実質細胞で生産され(肝胆汁)、分泌されます。
はじめ、2、3個の細胞に接する結合組織でかこまれた毛細血管にそって流れ出し、管は合流して太くなり、ついに胆管となります。
人ではこれが、いったん胆嚢にはいり、一時蓄えられていますが、この間に水分や電解質の一部が再吸収され、濃縮されます。
とくに総胆汁酸濃度は0.4~2%から2~10%へと嚢胆汁は数倍増加します。
〔胆汁の主成分〕
コール酸、ケノデオキシコール酸などの一次胆汁酸(肝臓でコレステロールから直接合成される胆汁酸)およびデオキシコール酸、リトコール酸などの二次胆汁酸(一次胆汁酸が腸内細菌により還元され、それぞれ1個の水酸基が除かれた胆汁酸)が、グリシンやタウリンとペプチド結合して、グリココール酸、タウロコール酸、グリコケノ
デオキシコール酸、タウロケノデオキシコール酸などの抱合型胆汁酸の塩です。
またこのほかに、コレステロール、脂肪、脂肪酸、レシチンなどの脂肪、ムコタンパク質、Na+、K+、Ca++、Mg++、C1-、HCO3‐などの電解質、血色素へムの分解産物である胆汁色素ビリルビンやビリベルジンなどが含まれています。
肝胆汁の比重は1.01前後、pHは7.1~7.3で、嚢胆汁ではそれぞれ、1.04,6.9~7.7です。
〔胆汁の主要な機能〕
脂肪の消化を促進する作用です。
食物摂取後、食物粥が十二指腸部に流入すると、小腸粘膜から内分泌される消化管ホルモン、コレシストキニン(パンクレオザイミンは同一物であることがわかりCCK/PZと略されます)の作用で胆嚢は収縮し(とくに高脂肪食時に強い)、肝胆汁も一部伴いつつ十二指腸部に送り出されます。
胆汁は食物粥と混合し希釈されますが、胆汁酸濃度は臨界ミセル濃度(critical micele concentration,CMC)以上に維持きれており、この強力なミセル形成能により食物粥中の脂肪は乳化、さらにはミセル化されます。
こうして、胆汁と同時に外分泌された膵液リパーゼの脂肪消化能は飛躍的に増加します。
その他、胆汁には腸の蠕動運動の促進作用、小腸上部での細菌の異常繁殖の抑制作用などとともに、胆汁色素のような老廃物や医薬その他の生体外異物の排池経路のひとつともなっています。
〔結石〕
胆汁成分間の相対濃度が変わり、それまで混合ミセルを形成し可溶化されていたコレステロールや胆汁色素などが析出すると、胆嚢や胆管内で大きな結晶に成長することがあります。
これが結石で、最近コレステロール結石患者が増加傾向を示し、食生活の西欧化との関連が推定されています。
胆管結石により胆汁分泌が阻害されると、血中の胆汁色素濃度が上がり、黄痘症状を呈することがあります。
また、場合によって、脂肪や脂溶性ビタミンの消化吸収率も低下します。
胆嚢炎(cholecystitis)とは(学術向上予備知識編)
肝臓下部に胆汁を一時蓄えておく嚢があります。
その炎症を胆嚢炎といいます。
〔胆嚢炎の原因〕
大腸菌、ブドウ球菌、レンサ球菌、チフス菌、など細菌感染によるもので、その発生に胆石の存在が大きな意義をもちます。
〔胆嚢炎の種類〕
急性胆嚢炎と慢性胆嚢炎があります。
〔胆嚢炎の症状〕
急性胆嚢炎とは
右上腹部に突然激しい痛みが飽食あるいは脂肪食後に起こります。
ときに曜吐や黄痘や発熱がみられます。
慢性胆嚢炎とは
右上腹部に持続性あるいは間歇性のくり返される痛みが起こります。
痛みはしばしば両側肩甲骨間の領域に放散します。
ときに消化不良症状を呈します。
〔胆嚢炎の治療〕
急性胆嚢炎の治療
急性胆嚢炎は食物の経口摂取の禁止、静脈内栄養補給、鎮痛剤、抗性物質の投与など内科的治療をおこないますが、胆嚢の壊痘あるいは穿孔の場合は手術の絶対的適応となります。
慢性胆嚢炎の治療
慢性胆嚢炎の場合は低脂肪食を行い、肥満を防ぎ、抗コリン作動薬、鎮痛剤を適宜投与します。
ビリルビンカルシウムはビリルビンとして説明します。ビリルビン(bilirubin)とは(学術向上予備知識編)
胆汁中に含まれている色素です。
主として赤血球が破壊されて生じたヘモグロビンから間接ビリルビンがつくられ、これが肝臓でグルクロン酸抱合されて直接裂ビリルビンとなり、胆管より胆汁として腸に排池されます。
腸管内で腸内細菌のはたらきにより、スチルコビリン、ウロビリンとなり、これらの一部は、腸管から再吸収され肝臓に運ばれ、肝臓より再び胆汁中に排他されます。
この代謝循環に異常が生じた場合ビリルビンは増加します。
そのさいの症状は黄痘として現れます。
黄疸は胆石症や胆石発作および胆汁を含みますので、黄疸で説明します。黄疸(jaundice,icterus)とは(学術向上予備知識編)
〔黄疸の原因〕
血液中のビリルビンが増加して、皮膚や粘膜が黄色くなった状態を黄痘といいます。
ビリルビンは、赤血球のおもな成分であるヘモグロビン(血色素)が脾臓でこわされてできる産物です。
このビリルビンは肝細胞にとり入れられて、グルクロン酸と抱き合って胆汁の中に排出されます。
胆汁中に排出された抱合ビリルビンは腸管内で腸内細菌の作用をうけ、大部分はステルコビリンとなって、糞便中に排泄されます。
便が黄褐色を示すのはこのステルコビリンのためです。
図:胆汁色素の変化
黄痘は以上のような代謝経路のどこかに異常があればおこってきます。
〔黄痘の見つけ方〕
黄痘がひどいときには、全身の皮膚が黄色ないし黄褐色になり誰でも気がつきます。
しかし、軽い場合には見おとすことがあります。
眼球結膜(しろめ)は黄痘があるとすぐに黄色くなるので、黄痘を早く見つけるには眼球結膜に注意すればよいです。
なお、人工光線の下では黄痘を見のがしやすいので、できるだけ自然の光の下で観察する必要があります。
〔黄痘と柑皮(かんぴ)症の区別〕
みかん、カボチャ、トマトなど(カロチン)を多量に含む食品をたべた場合には、手のひらや足のうちが黄色くなり、黄痘と間違われることがあります。
しかし、柑皮症では眼球結膜が黄色くなることはないので、黄痘と区別できます。
〔黄痘をおもな症状とする病気〕
急性肝炎、ウイルス性肝炎(血清肝炎)とは
急性肝炎、ウイルス性肝炎(血清肝炎):黄疸がでる1週間くらい前から、全身のだるさ、食欲不振、吐き気、ときには発熱などがあります。
そのため感冒や胃炎と間違って診断され、黄痘が出てはじめて肝炎と診断されることが多いです。
黄痘の出る前から尿の色が濃くなり、便が灰白色になります。
肝機能検査によってたやす診断できます。
閉塞性黄痘とは
閉塞性黄痘:胆道系の悪性腫瘍や胆石症などで、胆道がふさがったり、狭くなったりした場合にみられます。
胆石症では胆石発作とよばれる激痛の発作がつづいて黄疸がおこることが多いです。
一方、胆道系悪性腫瘍では黄痘のほかには症状のないことが多いです。
黄痘が長くつづと、皮膚がかゆくなり、また便秘になりやすいです。
閉塞性黄痘は外科的手術が必要なことが多いです。
肝内胆汁うっ滞とは
肝内胆汁うっ滞:それほど多い病気ではないですが、細胆管性ウイルス肝炎、原発性胆汁性肝硬変などのように胆道に明らかな閉塞がみとめられないのに、閉塞性黄痘と同じような症状と肝機能検査成績を示します。
閉塞性黄疸と見分けることが必要であり、内科的に治療します。
溶血性黄疸とは
溶血性黄疸:溶血とは赤血球がこわれることで、なんらかの原因で溶血が多いためにビリルビンの生成が増し、抱合化が不完全となるために黄痘となります。
新生児期には生理的な溶血のために、新生児黄痘がみられます。
※その他の黄痘をおもな症状とする病気
その他に
5・薬物による肝障害や、6・体質性質痘(遺伝性)などによっても黄痘をおこすことが知られています。
いずれにしても黄痘の場合には、多くの検査が必要であり、設備のととのった病院で診察をうけることがたいせつです。
ステロイドは胆汁酸を含みますので、ステロイドで説明します。(steroids)とは(学術向上予備知識編)
〔ステロイドの構造〕
ステロイドとは、ステロイド核、すなわちシクロペンタノペルヒドロフェナントレン炭素骨格(cyclo-pentanoperhydrophenanthrene)をもつ化合物の総称です。
ほとんどすべての生物はステロイドを合成します。
〔ステロイドの種類〕
大別すると、ステロール類、胆汁酸、ステロイドホルモン類、ビタミンD、強心配糖体に分かれます。
<コレステロール(cholesterol)脊椎動物の組織内に見出されるステロールの主成分です。
胆石の主成分として初めて単離されたのでこの名がつけられました(chole:胆汁)。
人の血中コレステロールは約200mg/100mlであり、その約1/4は遊離型として存在し、残りは高級脂肪駁のエステルです。
血清中では大部分リポタンパク質と給合して存在しています。
コプロステロール(copros-terol):人および肉食動物の糞便中にあります。
これはコレステロールが腸内細菌によって還元されたものです。
7-デハイドロコレステロール(7-dehydrocholesterol):プロビタミンD3です。
哺乳動物の臓器、とくに皮膚に多く、紫外線によってビタミンD3になります。
エルゴステロール(ergosterol)プロビタミンD2です。
きのこ類、カビ、イーストなどに存在し、紫外線によってビタミンD2になります。
胆汁酸:胆汁中にある一種のステロールであり、側鎖にカルボキシル基を有します。
胆汁酸塩は強い表面活性作用をもち、油脂を乳化し、リパーゼの作用を助けます。
ステロイドホルモン:女性ホルモン(プロジェステロン、エストロン、エストラジオール、エストリオール)、男性ホルモン(テストステロン、アンドロステロン)および副腎皮質ホルモン(コルチゾール、コルチコステロン)があります。
その他:溶血作用をもつサポン、強心剤のジギタリスなどもあります。
胆汁および胆汁酸は腸とも関係しますので、腸で説明します。腸(intestine)とは(学術向上予備知識編)
腸は消化管の一部であり、胃に続いて始まり肛門で終わります。
構造上、小腸と大腸の2部分に大別されます。
胃に続く小腸は上部から十二指腸、空腸および回腸に区別されていますが明確な境界はありません。
また全長は約6mに達します。
一方、大腸は回腸と結合している上行結腸、盲腸および虫垂、横行結腸、下行結腸、S字状結腸、直腸の順に腹腔の外周にそって一周しており、その長さは小腸に比べてはるかに短く約1.7mです。
〔腸の機能〕
腸の機能は大きく四つに分類されます。
(1)送られてきた食物の通路です。
(2)食物を消化します。
(3)消化された最終産物を吸収します。
(4)内容物を貯留します。
これらの機能をはたすために腸は独特の構造を持ち、また運動能力を有しています。
小腸は胃から送られてきた食物を消化し吸収するという消化管では最も重要な役割を演じています。
そのため、まず十二指腸において膵液および胆汁が注がれる開口部があります。
この十二指腸は長さが約25cmで後腹壁に固定されています。
膵液や胆汁の関口部は胃幽門から約10cmのところにあり、膵管と総胆管は合流して注がれています。
この部分を十二指腸乳頭、あるいは(Vater乳頭)とよんでいます。
この十二指腸上部や回腸の末端を除く小腸全体にわたって消化・吸収の面積をひろげるため箸しい形態的分化がみられます。
すなわち腸内腔には多数の輪状ヒダがみられ、とくに空揚上部でよく発達しています。
この輪状ヒダは粘膜組織によりなりたっています。
そして粘膜の表面には無数の絨毛が存在し、さらに表面積を増大させています。
この粘膜は単層の円柱上皮細胞でおおわれており腸陰窩とよばれる小陥凹が多く存在し腺を構成しています。
十二脂腸にはBrunner線(十二脂腸腺)とよばれる腺があり、アルカリ粘液を分泌し酸性に傾いている食物粥を中和する役割を持っています。
また小腸全体には腸腺が分布しています。
ところで腸腺は粘膜のくぼみのようなもので、これに対し絨毛は粘膜が突き出してできたものです。
したがって両者は単層円柱上皮の一連の連続したものであると考えてよく、事実腸線の基底部の細胞は絨毛上皮細胞に分化・移行していくのです。
この絨毛上皮細胞の表面は電子顕微鏡的に認められている(微絨毛)とよばれる小突起がみられ、さらに吸収面積をひろげています。
この微絨毛は径が約0.1μ、高さ1μの小突起で、細胞1個あたり約600個の微絨毛があるといわれています。
胃から送られてきた食物はまず十二指腸で膵液と胆汁に出合い、本格的消化作用が開始されます。
膵液は1日約1~3ℓ分泌されα-アミラーゼ、脂質分解酵素、タンパク質分解酵素等の酵素群を含んでいるのを始め、HCO3-を多く含みアルカリ性を示します。
〔腸の膵液中の消化酵素〕
列挙すると次のようになります。
a)腸の膵液中の消化酵素:α-アミラーゼ
α-アミラーゼ:この酵素は唾液アミラーゼと同じでα-1.4結合を切ります。
b)腸の膵液中の消化酵素:脂質分解酵素
脂質分解酵素:リパーゼが代表的で中性脂肪のエステル結合を分解します。
その他ホスホリパーゼ、コレステロールエステル水解酵素などがあります。
c)腸の膵液中の消化酵素:タンパク質分解酵素
タンパク質分解酵素:分泌時はプロエンザイムの型で活性は認められませんが消化液中で活性型に変換されます。
酵素の種類としてはトリプシン、キモトリプシン、カルボキシペプチダーゼA・Bなどがあります。
しかし上述したような消化酵素により各種栄養素は完全に消化されるわけでなく、ある程度の分子量は保たれています。
このことは強力な浸透圧の上昇を防ぐという意味があります。
それでは最終的な消化はどこで行われるかというと、絨毛表面です。
すなわち終末消化酵素(二糖類分解酵素やジペプチダーゼなど)は小腸上皮細胞膜表面に局在することが明らかにされ、消化が吸収表面で行われていることが知られるようになりました。
この概念を膜消化とよんでいます。
一方、胆汁はそれ自身に消化酵素は含んでいませんがひじょうに強い表面活性作用を示す胆汁酸塩を含んでいます。
この胆汁酸塩は脂肪を乳化して、リパーゼが作用しやすいようにすると同時に脂肪酸と結合して水溶性のミセルを作ります。
これらの作用によって脂肪の消化や吸収を間接的に促進しています。
ところで栄養素の吸収には細胞膜を通しての物質輸送がおこっていますが、赤血球膜などのような膜透過機構がそのまま適用されているのではありません。
すなわち吸収栄養素が管腔内から脈管内に達するには上皮細胞を通過し、さらに脈管内皮細胞を通過するといったように多くの膜を通過しなければなりません。
そこにはさまざまな膜輸送様式が考えられています。
すなわち、膜や輸送路を通しての単純な拡散などに加えて化学的な反応を通して輸送される場合があります。
それにはエネルギーと共役した、いわゆる能動輸送やエネルギーを共役しない、促進拡散などが考えられており、そこには、いわゆる担体キャリアーが存在していると考えられています。
またこの他に細胞、飲食作用を介した吸収機構もあります。
一方、小腸の運動機能は消化吸収、食塊の移動などにとってひじょうに重要な役割を演じています。
まず消化液と食物の混合あるいは、消化産物と粘膜上皮との接触という意味で、重要な役割を担っているのが分節運動です。
これは小腸の内輸筋の収縮によるもので収縮した部位の隣接部位が次に収縮し、またもとの部位が収縮するといったことを繰り返し、内容物が混和されます。
また内容物の移動にとって重要な運動は分節運動より、むしろ蠕動です。
この蠕動は原則として、小腸上部から下部へ同一方向に進行し、ふつう数回で消失します。
次に小腸で消化・吸収されずに残った内容物は大腸に移動します。
〔大腸の機能〕
大腸の粘膜は小腸とはちがって輪状皺壁や絨毛がありません。
また大腸の働きは前半部では、回腸から移動してきた内容物から水分および電解質を吸収する点にあります。
そして後半に致って糞便形成を行い体外に排出します。
したがって、大腸の働きに最も大きな役割を担っているのは運動機能です。
小腸での蠕動や分節運動は大腸でもみられ、とくに蠕動は小腸より強く持続時聞が長いです。
また、盲腸や上行結腸において小腸ではみられなかった逆蠕動もみられ、内容物を停滞させ水分を十分吸収するようになっています。
横行結腸に至ってからは1日に1~2回、食物を摂取することによって反射的に蠕動がおこります。
そして大腸の内容物は急速に直腸に達します。このことを胃―結腸反射による大蠕動とよんでいます。
このように直腸に糞便が達すると、直腸壁の伸展刺激によって骨盤神経を介して排便に必要とされる一連の反射(排便反射)がおこります。
また、大腸には常在細菌叢が存在し腸管内にあるので腸内細菌叢とよんでいます。
一般的にはBacteriocles,Lactobacillus(乳酸菌)、E.Coli(大腸菌)、Clostridiumが見られ、部位によっても分布差がみられます。
また腸内細菌は大腸で最も多いですが、小腸下部や回盲部にもみられます。
この腸内細菌によって小腸で消化吸収をうけなかった物が分解され発酵や腐敗がおこります。
腐敗によって生じた有毒物質は吸収され肝臓で解毒されます。
以上のように腸は栄養素の消化吸収から糞便の形成、排出に致るまでその機能を部位によって分担し合目的な構造や運動能力を有しているのです。
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