健康に快適な毎日を過ごすための食事と生活!

ご挨拶
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  1. 健康に快適な毎日を過ごすための食事と生活!
    1. 成人20~25歳が穀類を1日にとる場合。
    2. 子供を中心にしたカレーライスの場合。
      1. 〔野菜をたくさん使ったカレーライス〕
    3. 5大栄養素を目標に食品を選べば、健康体になりダイエット効果もあります。
    4. 1日に摂取したい栄養素の割合(エネルギー比率)と食品。
      1. 成人の場合
    5. 食生活指針:健康づくりのための食生活指針「文部省、厚生省、農林水産省(引用)」
      1. ○食事を楽しみましょう。
      2. ○1日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを。
      3. ○主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。
      4. ○ごはんなどの穀類をしっかりと。
      5. ○野菜・果物、牛乳・乳製品、 豆類、魚なども組み合わせて。
      6. ○食塩や脂肪は控えめに。
      7. ○適正体重を知り、日々の活動に見合った食事量を。
      8. ○食文化や地域の産物を活かし、ときには新しい料理も。
      9. ○調理や保存を上手にして無駄や廃棄を少なく。
      10. ○自分の食生活を見直してみましょう。
    6. 〔5大栄養素と食品例〕
      1. タンパク質を主に含む食品
      2. 脂質を主に含む食品
      3. 糖質を主に含む食品
      4. ビタミン、ミネラルを主に含む食品
    7. 〔離乳食の進め方の目安〕
      1. 離乳食の進め方の目安
        1. 注意事項
    8. 〔食品情成案〕(1日分)
      1. 乳児期
        1. (出生~1歳の誕生日まで)
      2. 幼児期
        1. 1~2歳は離乳食の延長(15か月まで)にあり、18か月までには幼児食に移行するため食習慣の確立則です。
      3. 妊娠期
        1. 280日(10か月)母胎の中で育つ胎児期は、最も成長する時期である(下記図参照)。
      4. 老年期
    9. 健康食品と栄養補助食品(サブリメン卜)
    10. 食生活と生理活性成分
    11. 1・食生活と悪性新生物(癌)
      1. 癌の発生とは
      2. 〔癌の成立〕
      3. 〔癌の発生に関与する要因〕
        1. 癌の要因
      4. 〔癌発生に対する要因〕
    12. 〔食品の抗イ二シエ一ター性(初発因子を抑制する作用)〕
      1. 〔イニシエーション抑制効果のある成分を含む食品〕
      2. 〔要因別イニシエーション抑制効果のある食品〕
        1. (発癌物質に対して抑制効果のある食品を下段に記載します。)
    13. 〔食品の抗プロモーター性(促進因子を抑制する作用)〕
    14. 〔癌に対する対策(試み)〕
    15. 2・食生活と動脈硬化症
      1. 表:〔高指血症の診断基準) (血清脂質値:空腹時採血)
      2. 図:〔血液のバランス〕
    16. 〔中性脂肪とは〕
      1. 〔コレステロールとは〕
      2. 〔リポタンパク質とは〕
      3. 〔リポタンパク質の名称とそれぞれの働き〕
      4. 電気泳動法による名称
        1. 〔リポタンパク質の名称と組成〕(17)
        2. 図:リポタンパク質の名称と組成
        3. 高脂血症に対して抗血栓作用が「強い食品」
        4. 高脂血症に対して抗血栓作用が「やや強い」
        5. 高脂血症に対して抗血栓作用が「弱い」
    17. 3・食生活と活性酸素
      1. 〔ラジカルの生成過程〕
        1. 図:ラジカルの生成過程
      2. 〔活性酸素とは〕
      3. 〔活性酸素を抑制・消去するには〕
        1. 図:活性酸素と抗酸化物質のバランスが重要
      4. 〔活性酸素消去する食品(食品中の抗酸化物質)〕
        1. 種実類、植物油を少量すつ献立に取り入れる。
        2. 野菜を十分食べる。
        3. 赤や緑などの色をもつ植物や魚類にも目を向ける。
        4. お茶は食後に、コーヒーやワインはときどき飲む。
        5. 特定の食品に片寄ることなくバランスよく摂取する。

健康に快適な毎日を過ごすための食事と生活!

私たちは健康で生き生きとした日常生活を営むために、栄養(食事)、運動(活動)、休養(睡眠)の三本の柱を中心とした生活習慣を繰り返しています。

特に、食事のレシピ内容は毎日の食生活習慣に大きな影響を及ばせます。

日常の食生活習慣は、性別、年齢、個人差によって異なります。

性別・・・男女によって食べる量が異なります。

年齢・・・年齢によって食べ方が異なるため、調理方法を工夫する必要があります。

個人差・・・個人によって身体の状況や嗜好が異なります。

成人20~25歳が穀類を1日にとる場合。

個人に適した食生活を営むうえで共通することは、身体に必要な栄養素である糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルを過不足なくとることです。

食品に含まれる栄養素の種類と量は、食品ごとに異なり、どのような食品であっても、1種類の食品のみで、すべての栄養素を必要なだけ含むものはありません。

だからこそ多くの食品を組み合わせて料理し、でき上がった料理を組み合わせて献立として食卓に載せたいのです。

例えば、日常よく食べるカレーライスも、野菜をたくさん使うとバランスのよい食事内容になります。

また、カレーライスだけでは果実が不足しているのでフルーツヨーグルトを献立に加えるとよいです。

生の果実にはビタミンが多く含まれています(缶詰にはビタミンは含まれていません)。

ついたくさん食べてします人や肥満を解消したい人は、生野菜のサラダを付け加えると、満腹感を味わうことができます。

サラダは、マヨネーズやドレッシングをかけると脂肪のとりすぎになるので、代わりにレモン汁をかけて食べるとよいです。

子供を中心にしたカレーライスの場合。

・桜えびを一緒に煮込む(材料とともに煮込むとカルシウムの給源になります)。

・スキムミルクを加える(水溶きして、最後の仕上げに加えると甘みが増します)。

・チーズを加えても美味しい(カレー粉を入れるときに細かく切って入れるとおいしくなります)。

・食べるときに牛乳を添える(タンパク質やカルシウムを摂取できます)。

〔野菜をたくさん使ったカレーライス〕

5大栄養素を目標に食品を選べば、健康体になりダイエット効果もあります。

身体に必要な栄養素は、毎日過不足なく摂取することが大切とは十分に認識されていると思いますがそのためには、5大栄養素あるいは6つの食品群(下記図参照)をもれなく組み合わせるようにすることが、献立を決めるときの目安になります。

3大栄養素・タンパク質、脂質、炭水化物

5大栄養素・タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル

1日に摂取したい栄養素の割合(エネルギー比率)と食品。

成人の場合

一日に必要な量は性別、年齢、個人差によって異なります。

ビタミン、ミネラルは十分にとるようにする。

料理の素材として使用する食品が、厚生省が策定した「健康づくりのための食生活指針」にある1日30食品以上であれば、必要な栄養素を自然にバランスよくとることができと定めています。

また平成12年に策定された新しい食生活指針では、食品の数にこだわらず、できるだけ多くの食品を組み合わせることをすすめています。

食生活指針:健康づくりのための食生活指針「文部省、厚生省、農林水産省(引用)」

○食事を楽しみましょう。

・心とからだにおいしい食事を味わって食べましょう。

・毎日の食事で、健康寿命をのばしましょう。

・家族団らんや人との交流を大切に。また、食事づくりに参加しましょう。

○1日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを。

・朝食で、いきいきした1日を始めましょう。

・夜食や間食はとりすぎないようにしましょう。

・飲酒はほどほどにしましょう。

○主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。

・多様な食品を組み合わせましょう。

・調理方法が偏らないようにしましょう。

・手作りと外食や加工食品・調理食品を上手に組み合わせましょう。

○ごはんなどの穀類をしっかりと。

・穀類を毎日とって、糖質からのエネルギー摂取を適正に保らちましょう。

・日本の気候・風土に適している米などの穀類を利用しましょう。

○野菜・果物、牛乳・乳製品、 豆類、魚なども組み合わせて。

・たっぷり野菜と毎日の果物で、ビタミン、ミネラル、食物繊維をとりましょう。

・牛乳・乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などで、カルシウムを十分にとりましょう。

○食塩や脂肪は控えめに。

・塩辛い食品を控えめに、食塩は1日1Og未満にしましょう。

・脂肪のとりすぎをやめ、動物、植物、魚油来の脂肪をバランスよくとりましょう。

・栄養成分表示を見て、食品や外食を選ぶ習慣を身につけましょう。

○適正体重を知り、日々の活動に見合った食事量を。

・太ってきたかなと感じたら、体重を量りましょう。

・普段から意識して身体を動かすようにしましょう。

・美しさは健康から、無理は減量はやめましょう。

・しっかりかんで、 ゆっくり食べましょう。

○食文化や地域の産物を活かし、ときには新しい料理も。

・地域の産物や旬の素材を使うとともに、行事食を取り入れながら、自然の恵みや四季の変化を楽しみましょう。

・食文化を大切にして、日々の食生活に活かしましょう。

・食材に関する知識や料理技術を身につけましょう。

・ときには新しい料理を作ってみましょう。

○調理や保存を上手にして無駄や廃棄を少なく。

・買いすぎ、作りすぎに注意して、食べ残しのない適量を心がけましょう。

・賞味期限や消費期限を考えて利用しましょう。

・定期的に冷蔵庫の中身や家庭内の食材を点検し、献立を工夫して食べましょう。

○自分の食生活を見直してみましょう。

・自分の健康目標をつくり、食生活を点検する習慣を持ちましょう。

・家族や仲間と、食生活を考えたり、話し合ったりしてみましょう。

・学校や家庭で食生活の正しい理解や望ましい習慣を身につけましょう。

・子どものころから、食生活を大切にしましょう。

(小項目は,食生活指針の笑践のためのもの)

例えば、ご飯(精白米)はリジンが不足していますが、豆腐入りみそ汁を組み合わせることによって、タンパク質のアミノ酸スコアは改善されます。(1)

食品中に含まれている栄養素や生理活性成分を知り、献立に生かすことによってストレスを和らげ、ウイルスなどの病原菌を制御し、正常な身体活動を営むことができ、健康体へとなり余計な体脂肪も減り、強い体になります。

〔5大栄養素と食品例〕

タンパク質を主に含む食品

肉類、魚介類、卵およびその製品、大豆およびその製品チーズなどです。

脂質を主に含む食品

肉類、魚介類の脂肪、植物油、アボカド(果実)などです。

糖質を主に含む食品

砂糖類、果実に含まれる糖質、パン・うどん・米などの穀類です。

ビタミン、ミネラルを主に含む食品

野菜は、成人の場合1日200g程度が望ましいです。

果実は、成人の場合1日200g程度の摂取が望ましいです。

〔離乳食の進め方の目安〕

離乳食の進め方の目安

注意事項

1・付表に示している食品の量などは、目安です。

なお、表中の矢印は当該期間中の初めから終わりへの変化(例えば、 離乳初期の離乳食1→2は5か月では1回。
6か月では2回)を示しています。

2・離乳の進行状況に応じた適切なベビーフードを利用することもできます。

3・離乳食開始時期を除き離乳食には食品I・Ⅱ(1回にいずれか1~2品)、Ⅲを組み合わせます。

なお、量は1回1食品を使用した場合の値であるので、例えばⅡで2食品使用の時は各食品の使用量は示してある量の1/2程度を目安としてください。

4・野菜はなるべく緑黄色野菜を多くしてください。

5・乳製品は全脂無糖ヨーグル卜を例として示しています。

6・タンパク質性食品は、卵、豆腐、乳製品、魚、肉等を1回に1~2品使用しますが、離乳後期以降は鉄を多く含む食品を加えたり、鉄強化のベビーフードを使用します。

調理用乳製品の代わりに育児用ミルクを使用する等の工夫が望ましいです。

7・離乳初期には固ゆでにした卵の卵黄を用います。

卵アレルギーとして医師の指示のあった場合には、卵以外のタンパク質性食品を代替してください。

くわしくは医師と相談しましょう。

8・豆腐の代わりに離乳後期から納豆、煮豆(つぶし)を用いることができます。

9・海藻類は適宜用いてください。

10・油脂類は調理の副材料として、バター、マーガリン植物油を適宜使用してください。

11・塩、砂糖は多すぎないように気をつけましょう。

12・はちみつは乳児ボツリヌス症予防のため満1歳までは使わないでください。

13・そば、さば、いか、たこ、えび、かに、貝類等は離乳初期・中期には控えます。

14・夏期には水分の補給に配慮してください。

また、果汁やスープ等を適宜与えましょう。



〔食品情成案〕(1日分)

乳児期

(出生~1歳の誕生日まで)

この時期は5か月までは母乳で育ち、5か月以降は離乳食が開始されるため(図離乳食の進め方の目安を参照)、上記には示されていません。

季節の果実をすりおろしたり、野菜はすべて加熱して与えることが基本となります。

食のスター卜となる最も大切な時期ですので、十分に注意してください。

幼児期

1~2歳は離乳食の延長(15か月まで)にあり、18か月までには幼児食に移行するため食習慣の確立則です。

特に、脳の発育が著しく、精神的にも発達するので、たんぱ質、カルシウム、ビタミン、ミネラルは欠かせません。

また、食をとおして将来の人格形成に重要ですので、十分に注意してください。

妊娠期

280日(10か月)母胎の中で育つ胎児期は、最も成長する時期である(下記図参照)。

特に妊娠2~3か月頃までは、人間としての機能が分化・発育するため、母親は5大栄養素を、毎日不足することなく摂取することが必要です。

老年期

平均寿命が伸びることは好ましいですが、寝たきりでは悲しい現実となります。

加齢とともに基礎代謝が低くなり、体内の活性酸素の消去能が落ちるので、抗酸化食品を知って毎日の食生活に取り入れましょう。

そして、体をよく動かし、自然に親しむのが最善の方法です。

健康食品と栄養補助食品(サブリメン卜)

近年、健康食品、栄養補助食品を安易に使用した結果、予想もできない悪いケースがしばしばみられるようになりました。

例えば、ビタミンAの不足からA剤を多量に使用したところ急激な嘔吐や脳圧充進による頭痛に悩まされたりするなどです。

あるいは食物繊維の不足を補うために、繊維を含んだ健康食品や栄養補助食品を摂取しでも、セルロースやマンナンなど、1種類の繊縦しかとることができないなどもあります。

繊維の含まれている野菜やきのこ類には、繊維の他に思いがけないと主副作用があったり、生体にとって重要な微生物が含まれるなど、さらに有効な栄養素となり得るものが少なくないのです。

栄養補助食品は抽出された成分だけです。

しかし、野菜やきのこにはその他の栄養素も豊富に含まれています。

食物繊維

ビタミンD

生理活性成分

食物繊維

カルシウム

ビタミンC

安易に健康食品や楽に頼るのではなく、食品のもつさまざまな生理活性成分を上手に利用すれば、薬以上の効果をもたらすことも考えられます。

例えば、ストレスを感じる時やストレス症状時にはビタミンB1、ビタミンCの消耗が激しいという知識をもち、胃の消化能力が落ちていることを自分で察知できれば、ビタミンB1を多く含む豚肉をやわらかく煮たり、ビタミンCを多く含むキウイフルーツやいちごを食べたり、生野菜のサラダではなく、キャベツやブロッコリーを茹でてお浸しにするなどの工夫ができます。

また、肥満傾向に気づいたときは、エネルギーを抑えてもビタミン、ミネラルを減少させないことが大事です。
そのためには脂肪の多い、リブロースやマヨネーズを腔え、ビタミンやミネラルを多く摂取できる魚介類や野菜、ごまを使った和え物などを献立に組み込むようにするとよいです。



食生活と生理活性成分

1・食生活と悪性新生物(癌)

癌の発生とは

癌の発生については、2段階説、加算説、共同説などいろいろな説がありますが、最も一般的で有力なのは、イニシエーションとプロモーションの相互作用など多くの段階を経て癌になるという多段階説です。

癌になる最初の段階は、イニシエーター(初発因子)とよばれる発癌物質によって、細胞内の遺伝子が、修正不可能な損傷を受けて、正常な性質から異常な性質になる過程(段階:イニシエーション)であり、これを突然変異といいます。

この突然変異を起こすものが発癌物質であり、最初に癌化のきっかけをつくるので初発因子とよばれています。

次の段階は、イニシエーターによって損傷を受け、異常になった細胞が、その後プロモーター(促進因子)とよばれる物質によって増殖・生長して癌細胞となる過程(プロモーション)です。

この促進因子には発癌はなく、傷づいた細胞を癌に育てあげ、増殖していくのです。

肉眼では到底見ることができないような小さな癌細胞が、その後プログレッサー(進展因子)の作用を受け、悪性の癌細胞として姿を現すようになります。

この過程をプログレッションといいます。

このように、癌はイニシエーターだけでも、また、プロモーターだけでも促進されず、相互作用によるものです。

イニシエーターによって突然変異を起こした細胞がプロモーターやプログレッサーによって癌細胞にまで増殖・生長する過程をみると、最初100nmだった細胞が1mmになるのに2.5~7.5年かかり、さらに10mmになるまでに10~13年の年月を要しています(下記図参照)。

高齢者より若年者のほうが進行が速く、また、癌の種類によっては30年を要する場合もあります。

〔癌の成立〕

〔癌の発生に関与する要因〕

癌の要因

上記の図に示したように、癌の発生にはさまざまな因子が相互に関連しています。
そのなかでも特に、癌発生には食生活の寄与度が大きく、約35%を占めるといいます。
バランスの惑い食事内容や不規則な食習慣が癌の素地をつくるといわれています。

〔癌発生に対する要因〕

食品そのものが癌発生の原因になることもあります。

例えば、わらびがイニシエーターとなって膀胱や小腸に腫瘍を発生させたり、油脂にプロモーターが含まれていたり、大量のアルコールがそれを体中に運搬したりします。

一方、これらの因子を抑制する物質も食品中に含まれることが確認されてきています。

乳癌は多くの国で女性のかかる癌の首位を占めており、日本でも増加しつつあります。

乳癌の発生には肥満や食事に影響されるホルモンが関与しており、肉類中心の食事から菜食(野菜中心)に変えることで、女性ホルモン(エストラジオール)がかなり低下して、癌の発生を抑えることが報告されています。

※わらびのイニシエーターはアル力リ処浬によって破壊される「詳しくわらび(蕨)に記載しています。わらび参照」。

したがって、癌を予防するためには、癌の発生や促進を抑制する物質(食品)を知り、日常の食生活習慣に生かしていくことが最善の方法です。

近年は、いちごやぶどうに含まれるエラグ酸など天然由来の物質や、合成カロテノイドなどの合成化合物を用いて、抗癌剤の体内蓄積あるいは副作用を軽くする癌治療法が注目されるようになってきました。

これは従来の抗癌剤と違い、毒性がないか、またはきわめて低い化学物質を、発癌過程に、もしくは全過程に投与して、癌の発生を抑制する試みです。(2)

〔食品の抗イ二シエ一ター性(初発因子を抑制する作用)〕

〔イニシエーション抑制効果のある成分を含む食品〕

癌抑制効果のある成分

ビタミン類、力ロテノイド類(ビタミンC、ビタミンB群など)

癌抑制効果のある食品名

ほうれんそう、にんじん、トマト、かぼちゃ、なす、キャベツ、しょうが、ブロッコリー、オレンジ、りんご、パインアップルなど

癌抑制効果のある成分

含硫アミノ酸(システイン、シスチンなど)

癌抑制効果のある食品名

にんにく、たまねぎ、キャベツなど

癌抑制効果のある成分

テルペン類(グリチルリチン、リモネンなど)

癌抑制効果のある食品名

甘草、オレンジなど

癌抑制効果のある成分

ポリフェノール類(カテキン、ク口口ゲン酸、没食子酸、コーヒー酸、エラグ酸、カフェイン酸、フェルラ酸など)

癌抑制効果のある食品名

いちご、ぶどう、緑茶、黒豆、黒米、ウコン、大豆など

癌抑制効果のある成分

フラボン類(野菜に含まれる外来性エストロゲンの一種であるイソフラボノイドを含む)

癌抑制効果のある食品名

グレープフルーツなどの果実、緑黄色野菜、ナッツ、豆腐、納豆など

クロロフィル

癌抑制効果のある食品名

緑黄色野菜など

〔要因別イニシエーション抑制効果のある食品〕

(発癌物質に対して抑制効果のある食品を下段に記載します。)

発癌物質

調理による焼け焦げ

(トリプトファンなどのアミノ酸)

(強力な発癌性をもつ)

発癌物質に対して抑制効果のある食品名

ほうれんそう(特に有効)、キャベツ、なす、ごほう、しょうが、ブロッコリー、りんご、パインアップルなど

発癌物質

調理による加熱分解物

発癌物質に対して抑制効果のある食品名

なす、ブロッコリー、こまつな、ほうれんそう、ごぼう、ピーマン、りんごなど

発癌物質

ニトロソアミン

(亜硝酸を含む食品とアミノ化合物を含む食品との食べ合わせによってできる)

発癌物質に対して抑制効果のある食品名

キャベツ、ブロッコリー、西洋わさび、パセリ、ピーマン、ごぼう、だいこん、緑茶など

発癌物質

ベンツピレン

(たばこの煙)

発癌物質に対して抑制効果のある食品名

なす、ブロッコリー、ほうれんそうなど

発癌物質

アフラトキシン

(保存状態が悪いナッツなどの力ビから発生する)

※これらの抑制効果、不活性化は力ット野菜や冷凍・乾燥野菜を用いた場合にも認められ、100℃で20分間加熱した場合にも安定した効果が認められています。

〔食品の抗プロモーター性(促進因子を抑制する作用)〕

プロモーション仰制効果の強い食品としては茎葉菜、果実、海藻類があげられます。

豆類・果菜類の抑制効果は比較的弱いです。

近年、抑制成分が分離されたものにオレアノール酸(青じそ)、モッコラクトンとアルクチン酸(ごぼう)、ジンジャロール(しょうが)、リコピン(トマト)などがあります。

現在、プロモーションの抑制は、食品に含まれる単独の成分ばかりではなく、食品の中に共存するいくつかの成分の加算、あるいは食品間の相乗効果によって発揮される場合が多いと考えられています。

このことからも食事は多種類の食品を組み合わせて摂取することが最も望ましいのです。

〔癌に対する対策(試み)〕

実際に癌になる可能性(イニシエーション、プロモーションを含む)がある人に対して癌を予防する次の実験が報告されています。(3)

中国では、食道癌の多い地域で、食道異形成の患者にリボフラビン(ビタミンB2)、ビタミンA、亜鉛の投与、米国では、子宮頸部異形成「※」を有する患者への葉酸投与、口腔内白斑症や大腸ポリポーシス患者に対してα-カロテンの投与などが実際に行われました。

※子宮頚癌:子宮の入口に近い部分の上皮にできる癌。子宮の奥の内膜にできる子宮体癌と合わせて「子宮癌」として扱うこともあります。

その結果、それぞれ適量を与えた場合は改善効果がみられ死亡率が低下しましたが、大量に与えた場合は逆に癌、心疾患などの死亡率が増加し、好ましくない結果がみられました。

人間には個体差があり、体内での代謝もまた千差万別です。

摂取する食品の種類や量もそれぞれに異なることを考えると、まず食品のもつ生理活用を知り、適切な食品を少量ずつ組み合わせて食べることが望まれます。

日本では、昭和58年度に開始された「対がん10か年総合戦略」の活動を、平成6年度「がん克服新10か年戦略」として、新たなスタートを切りました。(4)

また、世界の約4,500の研究をもとに、アメリカ癌研究財団と世界癌研究基金が世界癌研究所などの協力を得ながら、3年間を費やして作成された「癌予防に必要な15カ条の勧告書」が公表されています。

この内容は、700ページからなる「世界的に見た食物栄養と癌の予防(Food,Nutrition and Prevention of Cancer:a Globa Perspective)」と題して、1998年9月にイギリスとアメリカで出版されました。

その大要を(食生活に関する勧告を中心に)下記にまとめています。

(1)食量供給は植物性食品を基本とし、多種類の野菜や果実、豆類、精製度の低いでん粉質食品の摂取が望ましい。

砂糖の使用はなるべく控えること。

(2)多種類の野菜類、果実類を、1年を通じて相当量を摂取すること。

(3)その他の植物性食品については、多種類のでん粉質食や植物性たんぱく食品から摂取すること。

(4)肉類は赤身の肉とし、魚や鶏肉(家畜されていない動物の肉)がよい。

(5)動物性脂肪の多い食品の摂取を控え、適当な植物油を控えめに使用することが望ましい。

(6)塩分と塩蔵品を控え、総食塩摂取量を1日6g以下にすること。

(7)食品の貯蔵では、特に、カビの汚染に注意すること。

(8)食品の保管方法には最大の注意を払い、冷凍か冷却をすること。

(9)食品添加物や残留成分、化学汚染物質を監視する体制が必要です。

(10)肉や魚は低温で調理し、黒く焦がした食品は食べないこと。

(11)正常体重を維持し、成人期を通じて5kg未満の体重増加に抑えることが望ましい。

(12)運動などの適宜な身体活動を、常に維持することが望ましい。

(13)アルコールは、過度の飲酒をしないことが望ましい。

(14)タバコはどんな種類のものでも抑制すること。

(15)以上の事柄を守って生活をすれば、補助食品や補助栄養剤「※」は不必要となり、ほとんど役にたたない場合が多い。

※補助食品、補助栄養剤:日常摂取する食品に不足する栄養素を補い、栄養素のバランスを調整し、栄養状態の改善をめざした食品をいいます。

例えば、タンパク質、ビタミン類、カルシウムや鉄、食物繊維を添加したり、脂肪を除いてエネルギーを抑えた食品やドリンク剤などが含まれます。



2・食生活と動脈硬化症

日本人の死亡原因の1つとして、癌と並んで動脈硬化に起因する虚血性心疾患や脳血管疾患など「※」があげられます。(6)

※日本人の3大死亡原因:①悪性新生物、②心疾患、③脳血管疾患の順

動脈硬化とは、動脈(血管)の壁が肥厚して硬くなり、弾力が低下して動脈内腔が狭くなって血液の流れが悪くなる状態をいいます。

その危険因子である高脂血症(以下に説明)の予防・改善は、食事との関係が重要視され、適切な食品を選択します。

食生活習慣を取り入れることによって効果が期待できると考えられています。

高脂血症とは、生体の血液中の脂質が、下記表に示した基準よりも多くなった状態をいいます。

血液中にはタンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルが一定の割合で存在します。

もし、脂質が多くなりすぎると高脂血症であり、糖質が多くなりすぎると糖尿病です。

表:〔高指血症の診断基準) (血清脂質値:空腹時採血)

図:〔血液のバランス〕

血液中の脂質にはコレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸などが含まれていますが、病気に直接関与するのはコレステロ一ルと中性脂肪の増加による高脂血症です。

どちらも増加している場合を、混合型高脂血症とよびます。

〔中性脂肪とは〕

中性脂肪は、グリセリン(グリセロ一ル)に脂肪酸が1~3個エステル結合したもので、詳しくは、トリアシルグリセロール「※」とコレステロールエステルを指しますが、一般的な臨床検査では、中性脂肪=トリアシルグリセロール=トリグリセライド(トリグリセリド)=TGと表示されます。

※トリアシルグリセロール:グリセリンに3個の脂肪酸が結合したものです。

脂肪酸が2個結合したものをジアシルグリセロロール(11)(12)といいます。

中性脂肪は糖質系食品やアルコール、脂肪含有食品などの過剰摂取によって増加します。

つまり、生体内に貯蔵できる糖質の量(肝臓に6%、筋肉にはO.5~lO%程度)は限られており、毎日の食事から摂取する糖質(砂糖、お菓子、果実に含まれる果糖、パン、うどん、ご飯など)が過剰になった場合、体内に糖質として貯蔵できず、中性脂肪に生合成されて体内に蓄積されることになります。(7)

したがって、血液(血清)中の中性脂肪が高い場合やVLDL値〔下記図→(リポタンパク質の名称と組成)参照〕が高い場合には、砂糖、果糖を制限し、アルコールも制限するように指導します。(8)

中性脂肪の値は、そのときの食事の内容にかなり影響されます。

中性脂肪の極端な高値(>1,000mg/dl)は、膵炎の発症、あるいは虚血性心疾患発症の危険因子となります。

〔コレステロールとは〕

コレステロールは細胞膜の構成成分やステロイドホルモンの生成に必要な脂肪です。

適量の摂取は問題ありませんが、過剰になると血中コレステロール値を上昇させ、粥状動脈硬化症を起こして心筋梗塞や脳梗塞の危険性を高めます。

高脂肪食は胆石症の発作の誘発要因にもなります。(9)

高血圧症、高脂血症、糖尿病、肥満は、心臓や脳を取り巻く血管系疾患の危険因子(リスクファクター)で、脳血管疾患は寝たきり老人になる原因の第2位です。(10)

健康な毎日を過ごすためには、食品から摂取するコレステロール量は1日300mg以下が望ましいとされています。
コレステロールは肉類や卵に多く含まれています。

特に、ひき肉に多く、その摂取量には十分な注意が必要です。

動脈硬化症の場合には、肉類に含まれる飽和脂肪酸の摂取を減らし、魚介類などの多加不飽和脂肪酸の摂取を多めにします。

また、海藻・野菜に多い食物繊維の十分な摂取をはかります。(13)

コレステロールなどの脂肪を摂取した場合に、それらを速やかに排泄させる食物繊維や各種ビタミン類に含まれる生理活性を知ることが、健康で豊かな食生活を送るうえで欠かせません。

文部省の重点領域研究「食餌タンパク質によるコレステロール代謝の調整」では、大豆タンパク質のステロイド排泄促進作用の有効性が認められ、じゃがいもでも同様な結果が得られています。

高度不飽和脂肪酸の代謝産物であるイコサぺンタエン酸(エイコサぺンタエン酸=EPA)などは、血小板凝集阻止作用をはじめとするさまざまな生理活性をもち、これらの食品を適正に組み合わせた献立が現代人の食生活には必要です。

〔リポタンパク質とは〕

血液の脂肪は、水と仲が悪く(疎水性)、血液からはじき出されます。

そこで、水と仲のよい(親水性)アポタンパク質「※」と結合することによって「リポタンパク質」として血液中に存在できます。

※アポタンパク質:現在20種類近くが知られています。

キロミクロンにはB-48が、VLDLとLDLにはB-100が、HDLにはA-1などが結合しています。

リポタンパク質は結合している脂肪の種類によって比重が異なります。〔下記図→(リポタンパク質の名称と組成)参照〕

一番多くコレステロールを含むリポタンパク質をLDL(悪玉)コレステロールあるいは低比重リポタンパク質といい、コレステロールをほとんど含まないものをHDL(善玉)コレステロールあるいは高比重リポタンパク質とよびます(タンパク質が多いと比重が重くなります)。

〔リポタンパク質の名称とそれぞれの働き〕

〔下記図→(リポタンパク質の名称と組成)参照〕

(1)キロミクロンは、小腸で合成された卜リアシルグリセロールを脂肪組織、心臓などに輸送する役割を担う。(14)

(2)超低比重リポタンパク質(VLDL)は、肝臓で合成されるトリアシルグリセロールを心臓や脂肪組織などに輸送する役目を担う。(14)

(3)低比重リポタンパク質(LDL)は、肝臓で生成したコレステロールを末梢組織へ輸送する運搬体です。
動脈壁に取り込まれると動脈硬化を促進する。(8)

(4)なお、低比重リポタンパク質(LDL)は電気泳動によりβ-リポタンパク質として促えられる。(15)
家族性高コレステロール血症は、組織のLDL受容体の欠損のため著明な高コレステロール血症を呈する。(16)

(5)高比重リポタンパク質(HDL)は、さまざまな組織からコレステロールを肝臓へ輸送する役割を担う。(14)

(6)なお、血漿リポタンパク質を電気泳動法で、分離すると、高比重リポタンパク質はα-グロブリン画分に認められる。

(7)コレステロールの生合成は、コレステロール自身によってフィードバック調節を受ける。(18)

電気泳動法による名称

〔リポタンパク質の名称と組成〕(17)

図:リポタンパク質の名称と組成

(8)つまり、コレステロールは体内(肝臓)で80%合成され、食物から20%供給されます。

コレステロールの多い食物を食べ過ぎると、肝臓での合成がストップするにもかかわらず、食物からの摂取によって血液中のコレステロール濃度が上昇することになります。

高脂血症に対して抗血栓作用のある食品を下記に記載します。

高脂血症に対して抗血栓作用が「強い食品」

にんにく、ししとうがらし、ほうれんそう、セロリー、たまねぎ、ごほう、ねぎ、アスパラガス、トマト、メロン、いちご、レモン、はっさく、すいか、パパイア、マンゴー、あまなつみかん、サンマ、イワシ、サバ、ウナギ

高脂血症に対して抗血栓作用が「やや強い」

しゅんぎく、大根葉、チンゲンサイ、ピーマン、納豆

高脂血症に対して抗血栓作用が「弱い」

もやし、だいこん、みつば、かぼちゃ

なお現在、食品中の生理活性成分の研究がめざましく、ここに掲載した食品以外にも、有効成分が含まれると推測されます。

近い将来、さらに多くの食品の生活性成分が確認されると考えられますので、いろいろな食品を幅広く毎日の献立に組み入れることが大切です。

※当サイトでも新しい情報は、随時更新します。



3・食生活と活性酸素

近年、癌や動脈硬化の発症に活性酸素がかかわっていることが知られるようになりました。

また、活性酸素は老化を促進する物質としても注目されています。

活性酸素は有害な働きをする酸素分子で、大気汚染、ストレス、喫煙、偏食、紫外線などを介して連鎖反応を起こし、周囲の物質をどんどん酸化させます。

この反応は食品にもみられ、皮をむいたりんごが褐変するのも酸素の仕業です。

また、ビールの長期保存による劣化は、ヒドロキシルラジカルが生成され、アルデヒド類が増えることによります。

体内で障害をもたらす活性酸素には、スーパーオキシド(02-)、過酸化水素(H202)、ヒドロキシルラジカル(OH∔)、一重項酸素(102)が知られており、過酸化水素を除き、すべてラジカル「※」です。

※遊離基:「過激な」という意昧をもちます。

また特に、酸化する力の強いラジカルをフリーラジカル「※」といい、力の強弱によって「活性が高い(強い)、低い(弱い)」 という言い方をします。

※フリーラジカル:二酸化窒素、ペルオキシルラジカルなどです。

では、この活性酸素はどのようにして私たちの体内に害を及ぼすのでしょうか。

私たちは1分間も休むことなく酸素を吸って、炭酸ガスを吐き出しています。

呼吸によって体内に取り込まれた酸素は、ヘモグロビンによって血液中に運ばれ、全身の細胞に取り込まれます。

「レバー→貧血について→図:血液の性状を(食細胞)参照」

細胞はその酸素を利用して、体内で生き続けていくためのエネルギーを産生する化学反応を行っています。

体内の酸素は下記図に示したように、ぺアになっていれば安定していますが、結合が壊れると不安定な物質(02-)に変わってしまい、周りの安定している物質からぺアになる相手を引き抜いてしまいます。

この過激な行動をするのがラジカルです。

そして、次から次へと攻撃が始まり、体の中の多くの細胞を傷つけ、その結果さまざまな疾病の原因となります。

〔ラジカルの生成過程〕

図:ラジカルの生成過程

〔活性酸素とは〕

活性楮の発生とは、例えば、常生活において過度に紫外線に当たると、体内の酸素の結合を壊してしまうので、酸素(酸素分子)が反応性の高いラジカルに変わってしまうことがあります。

また、風邪をひき、ウイルスが体内に入ると、私たちの体はウイルスを排除しようとするため、白血球「レバー→貧血について→図:血液の性状を(食細胞)参照」がウイルスを取り込んで、戦いを始めます。(19)

このとき、多くの酸素が必要になり、活性酸素が生成されます。

放射線の被曝によっても体内で活性酸素が発生して悪性腫瘍が生じることがあります。

その結果、白血病の発生率が高くなります。(20)

あるいは、今タバコを吸ったとすると、タバコの煙に含まれるベンツピレンが体内に入り、酸素と出会うことによって化学反応が起こり、有害なスーパーオキシド・ラジカル(02-)を生じます。

ひとたび02-が生じると水素イオン(H+)と結合して過酸化水素(H202)が産生されます。

そこに鉄イオンや銅イオンが存在すると、最も反応性の高いヒドロキシルラジカル(OH・)のようなラジカルが生じることになります。

そして、この活性基は遺伝子(DNA)分子を攻撃、破損させて発癌の原因となります。

これら反応性の高いラジカルの発生は、摂取した食物の種類によっても影響されます。

例えば、酸化された脂肪を含む食物あるいは油脂を食事から摂取した場合には、体内で酸素と出会う(これを酸化という)ことによって、過酸化物質を生じ、組織細胞に傷害を与えるようになります。

このように、細胞内でラジカルが生じると、次々と活性酸素ができてしまうので、生理的にはラジカル=活性酸素と考えられています。

〔活性酸素を抑制・消去するには〕

活性酸素を抑制・消去しなければならないですが、しかし、私たちの体内には、微量なラジカルや活性酸素が生じても、常にそれを消去する機能が備わっていて、健やかな生活を過ごせるようになっています。

生体内で活性酸素を消去する酵素にはスーパーオキシド・ジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオン・ペルオキシダーゼがあります。

SODは02-を過酸化水素にする酵素(不均化反応)であり、カタラーゼやグルタチオン・ペルオキシダーゼは過酸化水素を除去する酵素です。

図:活性酸素と抗酸化物質のバランスが重要

また、食品中の成分にも02-を無毒化する化合物(低甘味料のトレハロース参照)や活性酸素を抑制する成分(カレー粉に含まれるクルクミンなど)もあり、これらはSOD様物質といわれています。

ビタミンEのようなラジカル捕捉型「※」の抗酸化物質も、SODと同様に生体内で非常に有効な働きをしています。

※捕捉型(捕捉作用):フリーラジカルを包み込んでしまい、みずかうが酸化されることによって、生体内で活性酸素が過剰に生成されるのを防ぐこと。

ところが、大量かつ連続的にラジカルや活性酸素が生じた場合に、生体内で消去できる限度を超えてしまうと、さまざまな疾患の発症を招くことになります。

それが悪性新生物(癌)や動脈硬化症であったり、免疫力の低下やアレルギーの原因となります。

また、老化現象にも大きく関与することが、現在解明されつつあります。

〔活性酸素消去する食品(食品中の抗酸化物質)〕

種実類、植物油を少量すつ献立に取り入れる。

これらに含まれるビタミンE(卜コフェロール類)は、フリーラジカルを包み込んで(捕捉作用)みずからが酸化されることによって、生体内の過酸化脂質が過剰に生成されるのを防ぎ、安定性を保持する働きをします。

野菜を十分食べる。

植物が育つ環境は、活性酸素ストレスが最も大きいため、野菜には活性酸素を消去する生理活性成分(カロテン、ビタミンE、ビタミンCなど)がたいへん多く含まれています。

野菜を十分に摂取することでラジカルや活性酸素からの障害を防ぐことができます。

また、果実については、糖質を多く含むもの(バナナやマンゴなど)もありますので、食べ過ぎないように注意してください。

一方、だいこんやピーマン、いちごやキウイフルーツに含まれるビタミンC(ビタミンC参照)は、還元作用をもち、活性酸素を直接消去する他に、みずから酸化されてしまったビタミンE(ビタミンE参照)を再生する機能をもちます。

赤や緑などの色をもつ植物や魚類にも目を向ける。

色素物質であるカロテノイド「※」は、あまり関心がもたれていなかったが、最近、生理活性成分が認識され、抗酸化物質として注目されています。

トマトやすいかのリコピン、ほうれんそうのルテイン、 ピーマンのカプサンチン、カニやサケのアスタキサンチンなどは代表的なカロテノイドであり、ビタミンEに比較すると、作用は弱いですが活性酸素の消去機能をもちます。

特に、一重項(ラジカルの生成過程の図参照)酸素消去には、リコピンやアスタキサンチンが最も効力があるとされています。

※力口テノイド系色素は一般に水には溶けない。

トマト参照、ニンジン参照、サケ参照

お茶は食後に、コーヒーやワインはときどき飲む。

お茶のカテキン、コーヒーのタンニン、ワインのイソフラボンなどのフラボノイド「※」は植物中の黄色色素物質であり、抗酸化物質として注目されています。

フラボノイドもラジカルや活性酸素の消去作用をもりますが、現在知られている他の生理活性成分に比較すると特別強くはありません。

しかし、フラボノイドは水溶性と脂溶性の中間の性質をもつので、他の生理活性成分とは異なった作用点での抗酸化作用が推測されます。

※フラボノイド系色素は配糖体になっているものが多い。

グレープフルーツ参照

特定の食品に片寄ることなくバランスよく摂取する。

その他にも、みそに含まれるメラノイジン、魚肉に含まれるセレン(微量元素)、しょうがの辛味成分であるジンゲロンやショウガオールなど、ほとんどの食品には多くの生理活性成分が存在しており、何らかのかたちでラジカルや活性酸素を消去しています。

したがって、特定の食品に片寄ることなくバランスよく摂取することが大切です。




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