- ダイエットとアミノ酸を正しく理解
- アミノ酸とは
- タンパク質をつくる20種のアミノ酸
- 必須アミノ酸:体内で合成できない9種類のアミノ酸
- 制限アミノ酸:アミノ酸バランスでタンパク質の質が決まる
- アミノ酸の上手なとり方
- おもなアミノ酸の種類と働き
- 必須アミノ酸はアミノ酸の説明に含まれます。アミノ酸(amino acid(S))とは(学術向上予備知識編)
- アミノ酸欠乏は断食の説明に含まれます。断食(fasting)とは(学術向上予備知識編)食断ちともいいます。
- 必須アミノ酸含量の割合はA/E比に含まれます。A/E比(A/E ratio) とは(学術向上予備知識編)
- 制限アミノ酸はアミノ酸バランスの説明に含まれます。アミノ酸バランス(amino acid balance)とは(学術向上予備知識編)
- アミノ酸スコア・制限アミノ酸・プロテインスコア、ケミカルスコアの説明に含まれます。ケミカルスコア(chemical score)とは(学術向上予備知識編)
- リジン(lysine,Lys)とは(学術向上予備知識編)
- 〔リジンの構造と特性〕
- 〔リジンの代謝〕
- 〔リジンの分解経路〕
- 〔リジンの栄養〕
ダイエットとアミノ酸を正しく理解
アミノ酸とは
アミノ酸はそれ自身が体内で重要な働きをすると同時に、食品タンパク質の栄養価を決定づけてもいます
タンパク質をつくる20種のアミノ酸
自然界には数百のアミノ酸が存在していますが、タンパク質の構成成分となるのはわずか20種類だけです(グリシン・アラニン・バリン・ロイシン・イソロイシン・セリン・スレオニン・アスパラギン酸・アスパラギン・グルタミン酸・グルタミン・リジン・アルギニン・システイン・メチオニン・フエニルアラニン・チロシン・ヒスチジン・トリプトファン・プロリン)。
アミノ酸は体内においてそれぞれ特徴的な重要な働きをするほか、アミノ酸自身が必要に応じてエネルギー源になる場合もあります。
しかし、特定のアミノ酸をとり過ぎると、免疫力の低下や体重減少、肝機能障害などを招くといわれています。
もう少し詳しく説明します。
タンパク質の性質を医学的知見から説明を行い、誰にでも分かるようにしています。
下に記載していますので読んで下さい。
ポイント!
健康管理やダイエットに密接に関係しているアミノ酸の役割を記載します。
効果
1・脂質の燃焼を促す
アミノ酸には、そもそも脂質を燃焼させますので、体質改善へとつながり、結果的にダイエットを行う時に痩せられる体質になります。
2・代謝を促す
健康管理やダイエットを行う上で必須である、代謝そのものを上げるのですから、エネルギー消費が大きくなり、結果的に、ダイエットが容易になり体調管理も行い易くなります。
結果
脂質の燃焼及び代謝が上昇するということは、運動ができる体に向かっているのです。
その結果少しの有酸素運動で効果を上げれるのです。
また、丈夫な体になりつつありますので、アミノ酸の働きにより、有酸素運動ダイエットを行っても疲労の回復が早まります。
アミノ酸の効果はすぐには現れませんが、確実に実感できるので、諦めないことです。
実感できる目安としては、代謝により水分の排泄が促されますので、体の浮腫みが解消されるのもヒントです。
一言メモ
グルタミン酸は耳にした事はありますよね。
グルタミン酸もアミノ酸の仲間で、最も多く存在しているのがグルタミン酸です。
細菌感染やウイルスの侵入を阻止するのもグルタミン酸の仕事です。
では、どのようにして阻止しているのかですが、腸から栄養を吸収しており、その際に腸も健康にしてくれます。
その結果、お通じも良くなり便秘の解消へと貢献してくれています。
必須アミノ酸:体内で合成できない9種類のアミノ酸
アミノ酸のうち、体内で必要量を合成することができない9種類(成人は8種類)は必須アミノ酸と呼ばれ、食事からとる必要があります。
食品中に必須アミノ酸が1つでも不足していると、タンパク質としての栄養的価値が下がります。
制限アミノ酸:アミノ酸バランスでタンパク質の質が決まる
タンパク質の質を評価する指標「アミノ酸スコア」で、理想のアミノ酸組成に対し、それぞれの食品の必須アミノ酸充足度を表したものです。
100以下のものを制限アミノ酸といい、最も低いものを第一制限アミノ酸と呼びます。
必須アミノ酸の理想的な組み合わせ
人にとって理想的と考えられる必須アミノ酸の組み合わせを表す「アミノ酸評点パターン」は、タンパク質の栄養的価値を化学的に評価する基準となるものです。
ある食品のアミノ酸含有量がすべて評点パターン以上なら、その食品のタンパク質の栄養価は理想的であるといえます。
アミノ酸評点パターン
人がタンパク質栄養を満たす理想的な必須アミノ酸の組成
アミノ酸の上手なとり方
アミノ酸の体内利用効率は「食べ合わせ」で高まります。
一般に、タンパク質源となる肉・魚・卵・大豆・乳類はアミノ酸スコアが良好です。
穀類はリジンが不足していますが、リジンが豊富な動物性食品などとし、いっしょにとることで、必須アミノ酸バランスが改善され、栄養価が高まります。
多様な食品を同時に食べることが大切で、そういった意味からも、主食・主菜・副菜のそろったバランス献立を基本食にしたいものです。
主な食品のアミノ酸スコア
おもなアミノ酸の種類と働き
アミノ酸のにはそれぞれ固有の機能があります。
必須アミノ酸はアミノ酸の説明に含まれます。アミノ酸(amino acid(S))とは(学術向上予備知識編)
1分子内に、少なくとも一つのアミノ基と一つのカルボキシル基をもつ有機化合物の総称です。
天然のタンパク質は、α-位にアミノ基をもつα-アミノ酸からなっており、プロリンとヒドロキシプロリンは例外的にイミノ酸です。
α-アミノ酸のα-位の炭素は不斉炭素原子であるために、D-型、L-型、二つの異性体が存在しますが、天然タンパク質はL-型によって構成されています。
グリシンには異性体がありません。
〔アミノ酸の略号〕
α-アミノ酸は、Gly、Alaなどのように、アルファベット3文字により、略号で表されることが多いです。
(下記アミノ酸の種類、構造および発見を参照)
〔アミノ酸の種類〕
大部分の天然のタンパクは、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、Cys、Met、Asp、Glu、As n、Gln、Arg、Lys、His、Phe、Tyr、Trp、Prolの20種類のアミノ酸からなっています。
コラーゲンあるいはゼラチンには、Hyp、Hylが多く含まれています。
このほか、β-アラニン、α-アミノイソ酪酸、γ-アミノ酪酸などが遊離あるいはペプチドの形で存在します。
ジアミノピメリン酸は、Lys生合成の中間体として細菌によって産生されます。
オルニチンとシトルリンはタンパク構成成分ではなく尿素合成の中間体です。
図:アミノ酸の種類、構造および発見
〔アミノ酸の発見〕
1806年、アスパラギンがアミノ酸としてはじめて天然物中、アスパラガス抽出液中に発見されました。
1810年には尿結石からシスチンが見い出されました。
1820年ゼラチン水解物からグリンン、筋肉、羊毛からロイシンを見い出して以来、19世紀の内にチロシン、セリン、パリン、アラニン、フェニルアラニン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、シスチンの順でタンパク水解物中から見い出されました。
20世紀にはいってプロリン、卜リプトファン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ヒドロキシリジン、アスパラギン、グルタミンがタンパク成分として1932年までに見い出されました。
1922年、溶血性連鎖状球菌の成長因子としてメチオニンが、1935年ラットの成長必須因子としてスレオニンが、見い出されて、アミノ酸発見の歴史は終わりました。
(上記アミノ酸の種類、構造および発見を参照)
図:ラットの組織中の必須アミノ般
〔アミノ酸の性体内分布〕
組織タンパク構成成分および遊離アミノ酸として存在します。
タンパク構成成分としては、大部分のアミノ酸が40~180mM、トリプトファンが10mM、グリシンが240mMの濃度で存在するのに対し、遊離アミノ酸としては、大部分のアミノ酸が60~240μM、卜リプトファンが20μM、アラニン、グルタミン酸、グルタミン、グリシンが1~3mMの濃度で存在します。
つまり、生体内アミノ酸をモル数で計算して99.4%はタンパク成分であり、0.6%が遊離アミノ酸です。
遊離アミノ酸の大部分が筋肉と腸に存在します。
遊離型のリジン、アラニン、グルタミン、グリシンの75~80%が筋肉中に存在します。
遊離アミノ酸のうち、血漿遊離アミノ酸が占める割合はアルギニンで6%、他は0.2~3%です。
〔アミノ酸の合成〕
生体に必要なアミノ酸のうち、生体が合成しえないため、食餌として摂取しなければならないアミノ酸を必須アミノ酸あるいは不可欠アミノ酸といいます。
1985年FAO/UNUで提案されたアミノ酸評点パターンでは、従来幼児にのみ必須とされていたヒスチジンが成人にとっても必須とされたので、人の必須アミノ酸は、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリンの9種であり、またシスチンおよびチロシンはそれぞれメチオニンおよびフェニルアラニンの必要量を低減する効果が認められています。
ラットの場合には、アルギニンも必須アミノ酸です。
その他のアミノ酸は生体内で必要量を合成しうるので非必須アミノ酸あるいは可欠アミノ酸とよばれています。
アンモニア、アラニン、アスパラギン酸分岐鎖アミノ酸、チロシン、オルニチンなどのアミノ基供与体とα-ケトグルタル酸からグルタミン酸が容易に合成されます。
グルタミン酸がアミノ基供与体となって、ピルビン酸、オキザロ酢酸、ホスホヒドロキシピルビン酸から、アラニン、アスパラギン酸、セリンが合成されます。
セリンからグリシンが、セリンとメチオニンからシステインが合成されます。
〔アミノ酸の分解〕
アミノ基転移反応あるいは脱アミノ反応によりアミノ基と炭素骨格が分離するところから分解がはじまります。
炭素骨格がピルビン酸、オキザロ酢酸、α-ケトグルタル酸などを経てブドウ糖合成の材料になりうるアミノ酸を糖原性アミノ酸といいます。
アラニン、プロリン、オキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、セリン、グリシン、スレオニン、システイン、アルギニン、ヒスチジン、バリン、メチオニン、トリプトファンがこれに属します。
炭素骨格がアセチルCoA、アセトアセチルCoAなどを経て、ケトン体の合成材料になりうるアミノ酸をケト原性アミノ酸といいます。
ロイシン、イソロイシン、リジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンがこれにあたります。
これらのアミノ酸はロイシンを除いて、ケト原性であると同時に糖原性でもあります。
ロイシンは純粋にケト原性です。
アミノ基は、アラニン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、アンモニアなどの形を経て、尿素サイクルにより尿素に合成されて体外へ排出されます。
〔アミノ酸、代謝の動態と臓器相関〕
図:アミノ酸・タンパク代謝の動態
食餌性アミノ酸が生体内へ流入し、生体内遊離アミノ酸と混合して組織タンパクの合成に使われます。
組織タンパクは常に合成と分解が行われているので分解によって生じたアミノ酸は生体内遊離アミノ酸と混合します。
生体内遊離アミノ酸は常に分解され、炭酸ガスと尿素へと転換されていきます。
生体内遊離アミノ酸が炭酸ガスと尿素に転換される過程は各種臓器の代謝上の分担と協調によって遂行されます。
この臓器協調は血中遊離アミノ酸によって仲介されます。
筋肉では多量のロイシン、イソロイシン、バリン分岐鎖アミノ酸が脱アミノされ、生じた炭素骨格は筋肉中で代謝されます。
アミノ基は、グルタミン酸の形から、アスパラギン酸を経てプリンヌクレオチドサイクルによりアンモニアに転換されるか、アラニンの形に変えられます。
アンモニアはグルタミンに転換されます。
こうしてアラニンとグルタミンが血漿中へ放出されます。
腎では、多量の分岐鎖アミノ酸とグルタミンなどが代謝され、生じたアンモニアは尿中へ排出される一方、アミノ基はグルタミン酸を経て、セリン、アラニンの形で血漿中へ放出されます。
腸は血漿からとりこんだグルタミンなどを代謝して、アンモニア、プロリン、シトルリン、アラニンなどを血漿中へ放出します。
かくして血漿中へ放出されたアラニン、セリン、アンモニア、プロリン、シトルリンなどは絶えず肝によってとりこまれ、それらのアミノ基は尿素に転換されます。
〔アミノ酸の栄養効果〕
生体はタンパク、核酸など窒素含有有機物質からなっていると同時に、尿素、尿酸、クレアチニン、アンモニアなどの窒素化合物を絶えず体外へ排出しています。
このため生体は絶えず、窒素含有物質を摂取しなければなりませんが、食餌性窒素含有物質のうち、生体の窒素補給源として有用なのはタンパクないしはアミノ酸のみです。
食餌性核酸は生体の窒素源とはならなりません。
このことから、食餌性タンパクないしはアミノ酸の意義はおのずから明らかです。
ことに、生体が必要とし、しかも合成しえないアミノ酸、つまり必須アミノ酸の食餌による供給の意義は明白です。
食餌性タンパク・アミノ酸の栄養効果は生体への窒紫源の供給にとどまりません。
食餌性タンパク・アミノ酸は種々の生体機構を通じて生体に影響を与えます。
腸管からの吸収、食欲、 ホルモンの分泌と不活性化、酵素の誘導と抑制、核酸の合成分解などの機構に対して、いずれかのアミノ酸単独で、あるいは、いくつかのアミノ酸の組み合わせにより効果を表します。
こうした食餌性タンパク・アミノ酸の栄養効果は、種々のアミノ酸、ことに必須アミノ酸の量比と量によって左右されます。
図:ヒトにおける必須アミノ酸必要量
〔アミノ酸、食餌性アミノ酸の量比〕
食餌性タンパク・アミノ酸が生体に対して好ましい効果「窒素平衡の維持、体重増加など」をもたらすためには、一定のアミノ酸の量比を必要とします。
最適量比に比べて、一つないしは複数のアミノ酸が少ないと、そのタンパクあるいはアミノ酸混合物の利用度が低くなります。
このようにある限られたアミノ酸の含有量が少ないことがタンパクあるいはアミノ酸混合物の利用度を制限するという意味で、これらを制限アミノ酸とよびます。
90%白米食に0.25%L-リジン塩酸塩と0.1%DL-スレオニンを添加すると非添加群に比べて、ラットの体重増加は3倍近くになります。
リジン添加量を0.25%から0.3%に増すと成長は低下しますが、0.3%にするとともにスレオニン添加量も0.2%に増すと体重増加がもとにもどります。
白米食にあっては、リジン、スレオニンが制限アミノ酸であることがわかるとともに、アミノ酸の最適量比がかなり微妙なことがわかります。
また、制限アミノ酸を添加する前の状態をアミノ酸インバランスとよびます。
アミノ酸インバランスは低タンパク食に第二制限アミノ酸の少量を添加したり、あるいは1種の必須アミノ酸を欠くアミノ酸混合物を添加してもつくり出すことができます。
一つあるいは少数の必須アミノ酸を大量に添加することによっても、必須アミノ酸の量比がバランスを失い、生体に好ましくない効果「体重減少、脂肝生成、食欲低下」をもたらします。
これは、アミノ酸の毒性として理解されています。
メチオニン、チロシン、分岐鎖アミノ酸のいずれか一つ、グルタミン酸などに異なる程度の毒性が認められています。
〔アミノ酸の必要量〕
生体に好ましい効果をもたらすためには、アミノ酸の混合量比ばかりでなく、摂取あるいは投与の全量が問題となります。
必要量は研究者によって異なります。
何を基準として、好ましい効果と判定するかによって異なる体重増加、窒素平衡の維持のいずれを基準にする場合にも、体重増加は大であれば大であるほど好ましいと判断するか、窒素平衡はどのレベルでの維持を好ましいと判断するかによって異なります。
さらには寿命の長いほど好ましいと判断しようとすれば、容易には決定しえない量といえます。
アミノ酸欠乏は断食の説明に含まれます。断食(fasting)とは(学術向上予備知識編)食断ちともいいます。
〔アミノ酸欠乏、断食と低栄養〕
正常な代謝や発育に必要な食物が与えられないと栄養不良になります。
栄養不良は大別して栄養素全体の量的欠乏による量的栄養不良(低栄養、uncler-nutrition)と、ある種の栄養素のみの欠乏による質的(部分的)栄養不良とに分けることができます。
(質的栄養不良とは)
質的栄養不良とはビタミン欠乏やアミノ酸欠乏などをさします。
(量的栄養不良とは)
量的栄養不良とはエネルギ一代謝の障害を伴い、一般に低栄養とよばれています。
戦後の食糧難時代に国内で多発した栄養失調症もこの低栄養の一つです。
断食は低栄養の極端なものであって、戦争や地震などの災害時や各種の疾患や手術時にも経験します。
また肥満や成人病の治療のためや宗教行事としても断食を行うことがあります。
〔アミノ酸欠乏、断食の限界〕
断食の世界レコードをみると、イタリアで囚人が水だけを飲んで63日目に死んでいます。
1831年西ドイツのある画家は66日の生存のレコードをつくっています。
アイルランド革命を企てたCork市の市長Mac-Swineyは断食75日目に死んでいます。
1920年断食の限界には個人差が多いのでー率にはいえませんが、体重減が40%に達する日数がほぼ目安となります。
1950年Keysが24週間にわたって実施した低栄養試験のさいの体重減少速度を適用した計算式からの推算値によれば、体重が40%減少するまでの日数は50~60日となっています。
食物が若干でも与えられる半飢餓の状態であれば生存日数はさらにのび、死の限界の体重減少値(40%減)も馴化機構の発現によってもっと大きくなります。
なお、断食のさいに水を全く飲まない場合には絶対断食、絶対飢餓(absolute hunger)で、その耐久日数は14日でありましたが、死因は水分欠乏であり、栄養欠乏とは別の問題です。
〔アミノ酸欠乏、断食による物質代謝の変化〕
体内に貯蔵されたグリコーゲンは消失し、一方では脂肪の燃焼が盛んとなります。
これは呼吸商の低下として測定されます。
さらに脂肪の不全酸化物であるアセトン体が生じて酸血症(acidosis)となり、尿にはアセトン体が排泄されます。
また、タンパクの異化は断食のはじめ1~2日間くらいは低下しますが、その後は上昇します。
これは体内の貯蔵性タンパクがエネルギー源に用いられるためです。
さらに貯蔵タンパクが消耗した後は組織タンパクの代謝は低下(適応)して異化量は減少します。
しかし断食の後期には体内の可燃性養素も消費しつくし、代謝の適応も限界になり、これ以上のエネルギ一節約は不可能となります。
この状態にまでなると、再び組織タンパクの分解が活発となり、重要臓器のタンパクも利用されはじめます。
その結果タンパクの分解産物が尿中に出て、いわゆる窒素排池の死前上昇の原因となります。
このようにして代謝異常による重要諸臓器の機能は障害され、代謝産物による中毒も発生して、断食死がおこります。
以上の他、水分塩分代謝にも変調がおこり、断食によって水だけ飲んで全く塩分を摂取しなければ、水が尿中に排池されるのに伴って体内塩分も脱出し、塩分欠乏に陥ります。
また、断食によって組織細胞がこわれはじめると、細胞内塩分であるカリウム、マグネシウム、リン、イオウなどの尿中への排池が増します。
断食の後期には尿中に排泄される窒素量とリン量の比(5.3:1)、窒素:イオウの比(14:1)およびナトリウム:カリウムの比(1:0.425当量)はいすれも筋肉のそれに匹敵するようになります。
さらにカルシウムの排池も増しますが、これは骨成分の分解によるものであって、上記のacidosisの影響と考えられます。
〔アミノ酸欠乏、断食による生理機能の変化〕
断食の最初は自覚症として、ひじょうに空腹を感じ、倦怠感も強いです。
しかし空腹感は2~3日で大分慣れてしのぎやすくなります。
しかし倦怠感は日増しに強くなり、作業意欲は低下し、活動はにぶくなります。
エネルギ一代謝には適応現象があらわれ、基礎代謝の低下(20~30%程度)がみとめられます。
循環機能は心臓の萎縮によって低下し、血圧の低下や徐脈もみられます。
身体運動時には循環機能不全が現れますが、その原因は心臓の衰弱以外に栄養性貧血が加わるためです。
血漿タンパク量の減少、ことにアルブミンの減少は著明でA/G比は低下します。
また血清γ-グロブリンも減少し、一方では多核白血球も減少するので、感染に対する抵抗力は低下します。
必須アミノ酸含量の割合はA/E比に含まれます。A/E比(A/E ratio) とは(学術向上予備知識編)
〔A/E比の定義〕
タンパク質の栄養価を化学的に評価する方法の一つです。
食品タンパク質中の全必須アミノ酸含量(E)に対する個々の必須アミノ酸含量(A)の割合を示します。
実際にタンパク質の栄養価として表す場合には比較基準タンパク質中のこれらの値に対して最低の割合を示すアミノ酸(制限アミノ酸)の値(割合)で示します。
図:主要食品の卵価・入乳価・生物価
すなわち、食品タンパク質中の制限アミノ酸含量/全必須アミノ酸含量を比較基準タンパク質中の当該アミノ酸含量/全必須アミノ酸含量で割り、100倍した値です。
比較基準タンパク質として鶏卵(全卵)を用いた場合を(卵価)、入乳を用いた場合を(人乳価)といいます。
1973年にFAO/WHO共同専門委員会が新しくアミノ酸スコアを提唱して以来、あまり一般的な方法ではなくなりました。
制限アミノ酸はアミノ酸バランスの説明に含まれます。アミノ酸バランス(amino acid balance)とは(学術向上予備知識編)
食品タンパク質の栄養価は、必須アミノ酸のどれかが必要量を下まわるときには当然低いですが、このような制限アミノ酸の量だけではなく、アミノ酸相互の比率によって影響を受けることがあります。
その最も顕著な例が後述のアミノ酸インバランス(amino acid imbalance)です。
このような意味で各アミノ酸の割合がバランスしていることが必要です。
この場合のバランスとは、各アミノ酸の含量が必要量の割合にだいたい比例している状態と考えられ、非必須アミノ酸については通常あまり問題になりません。
〔アミノ酸バランス、ヒトの必須アミノ酸の必要量パターン〕
アミノ酸評点パターン
図:アミノ酸評点パターン
アミノ酸評点パターンに示されているように年齢によって必須アミノ酸の要求量は変化し、成人ではタンパク質1g中の全必須アミノ酸の必要量の合計が低下するとともに、必須アミノ酸内での要求量の割合も変化しますが、このような差がとくにバランスに大きく影響するとは考えられていません。
食品タンパク質としては人乳、牛乳、卵のタンパク質のように栄養価の高いものはアミノ酸組成も比較的よく似ており、いずれもバランスのよいものです。
FAO/WHO/UNUでは就学前児童のアミノ酸要求量に基づいてタンパク質の栄養評価のための算定用評点パターン(scoring pal-tern)を提出しており、現在では一応ヒ卜におけるアミノ酸基準組成(reference pattern of amino acid)として用いられています。
参考のために、幼ラットの最大成長に必要なアミノ酸要求量パターン、ならびに成熟ラットの窒素-平衡維持のためのアミノ酸要求パターン表を掲載します。
図:幼ラットの成長に必要な必須アミノ酸パターン・成熟ラットの窒素-平衡維持に必要な必須アミノ酸パターン
〔アミノ酸インバランス〕
アミノ酸インバランスとは、食餌アミノ酸パターンが上表のアミノ酸要求量パターンと比例的でない場合(アンバランス)を意味するのではなく、低タンパク食に制限アミノ酸の一部を添加したときに、他の制限アミノ酸の要求量が増加したり、一つの制限アミノ酸を含まないアミノ酸混合物を低タンパク食に添加すると、添加しない場合よりも成長低下などの好ましくない現象が生じ、アミノ酸混合物から除かれた必須アミノ酸の補足により回復する場合などをさして用いられます。
歴史的には低カゼイン食にトウモロコシ粉を添加したときに、ニコチン酸、あるいはトリプトファン欠乏が生じたことから研究が始められました。
低フィブリン食の場合はメチオニン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジンなどがほぼ同程度欠乏していますが、この食餌に少量のメチオニン、フェニルアラニンを添加するとラットの成長が低下し、残りの制限アミノ酸の添加で回復します。
一般に低タンパク食に一つの必須アミノ酸を含まないアミノ酸混合物をやや多量添加すると成長の低下がみられます。
この場合、血中の遊離アミノ酸の中、制限アミノ酸の濃度が著しく低下し、それに伴って食餌摂取量の低下、成長の低下がおこります。
この場合、制限アミノ酸の分解は必ずしも促進されるのではなく、一部の組織に多く利用されており、体内での制限アミノ酸の利用上でのアンバランスが生じます。
〔アミノ酸インバランスの影響〕
成長低下のほか、脂肪肝の生成する場合もあります。
ロイシンが制限アミノ酸ではないときでもロイシンの添加でイソロイシン、バリンなど構造類似のアミノ酸の要求量の増加することがあり、この場合はアミノ酸の拮抗としてインバランスと区別されています。
一つのアミノ酸を多量に与えると一般に悪影響がありますが、この場合は過剰毒性といわれます。
アミノ酸スコア・制限アミノ酸・プロテインスコア、ケミカルスコアの説明に含まれます。ケミカルスコア(chemical score)とは(学術向上予備知識編)
Mitchell,H,H,らによって考案されたもので、タンパク質のアミノ酸組成に基づいた栄養評価法の一つです。
彼らは全卵タンパク質のアミノ酸組成を基準としてその必須アミノ酸含量と試料タンパク質中のアミノ酸含量を比較し、全卵中のものに比較して最も少ない必須アミノ酸(制限アミノ酸)の不足割合と生物価(biological value)との関係を調べると両者の間に高い相関性がえられました。
図:制限アミノ酸の不足割合と生物価との関係
したがって、制限アミノ酸の基準タンパク質中の当該アミノ酸含量に対する割合で栄養価を表すことができると考え、その価をケミカルスコアとしました。
しかし、図からもわかるように、制限アミノ酸の含量がゼロでも生物価は必ずしもゼロになるというわけではありません。
また、生物価は食餌中のタンパク質含量によって変化するもので、ケミカルスコアはアミノ酸組成によって一義的に決まる価であり、両者に本質的な差異がありまが、ケミカルスコアの算定は動物実験によらず化学分析のみによってできること、混合タンパク質の栄養価についても予測できるなどの大きな利点があります。
1957年のFAOのタンパク質必要量に関する報告では、健康人の必須アミノ酸必要量に基づいて定めた理想的なアミノ酸配合(規準配合、provisional pattern)を想定し、全卵タンパク質のかわりにこの規準配合に基づいてケミカルスコアを計算しましたが、そのさいプロテインスコア(protein score)ということばが用いられました。
また、1973年のFAOのエネルギー、タンパク質の必要量に関する報告では、児童に対するアミノ酸必要量を中心にして暫定的アミノ酸評点パターン(provisionalscoring pattem)を提案し、これを基準にしてMitchellらの方法と同様な計算でアミノ酸スコア(amino acid score)を求めています。
ケミカルスコア、プロテインスコア、アミノ酸スコアはFAOでは同義語としていますが、国内では上記のような基準アミノ酸の違いによって名称が区別されて用いられていることも多いです。
リジン(lysine,Lys)とは(学術向上予備知識編)
図:リジン
〔リジンの構造と特性〕
タンパク質を構成する主要アミノ酸の一つで、タンパク質中に2~10%含まれます。
分子内に2個のアミノ基をもつ塩基性アミノ酸です。
ε-アミノ基はタンパク分子中では通常遊離の状態にあり、その反応性が他のアミノ酸にない特徴を与えています。
針状または板状に結晶し、水には極めてよく溶解します。
〔リジンの代謝〕
タンパク質の構成素材としてそのまま利用されますが、硬タンパク質中ではさらに特異的な変化をうけるのが特徴です。
すなわち、コラーゲン中では水酸化され5-ヒドロキシリジンになり、エラスチン中ではリジン4個がピリジン環を中心に四方に放散する形で結合し、デスモシン、イソデスモシンといわれる物質に変化します。
これらの物質はそれぞれの繊維性タンパク質の特性に不可欠の要素であると考えられています。
〔リジンの分解経路〕
サッカロピンを経てアセチルCoAに至りますが、その代謝速度は他のアミノ酸にくらべて遅いと考えられています。
スレオニンとともに体内でα-アミノ基転移反応をうけないアミノ酸です。
〔リジンの栄養〕
食品タンパク質のうちでは最も制限アミノ酸になりやすい米、 小麦をはじめとする穀類タンパク質中の含量は著しく低く、このため米、小麦のタンパク質のアミノ酸スコアはそれぞれ67、53になっています。
しかし、動物性タンパク質には多量含まれているので、実際の食事で不足することはあまりないです。
大豆には動物性タンパク質と同程度の含量があります。
(大豆の詳しい説明はこちらから)
日本人の平均的な食事構成からアミノ駿スコアを算定すると、動物性タンパク質の摂取割合(動タン比)が約30%をこえるとリジンは制限アミノ酸でなくなることが知られています。
食品中のリジンは高温て加熱される条件におかれると不安定であり、これは特に糖質が多量存在する状態や、脂質が酸化される状態において著しいです。
その機構は複雑ですが、リジンのε-アミノ基と糖質の還元性基(OH)との結合にはじまるメラノイジン反応(褐変反応)、あるいは脂質の酸化で生ずるアルデヒドで同様な縮合がおこると考えられています。
このほか高温でアルカリ処理する場合には分子内にリジノアラニンが生成し、これがリジン含量の低下や毒性をもたらすことが知られています。
これらの反応で食品中のリジンの利用性が低下することから、その程度を知るために有効性リジンの定量法が確立されています。
しかし、通常の食事構成ではこのように利用されないリジンの量は全体のリジン量にくらべてごくわずかであるので、それほど心配する必要はないです。
図:リジン代謝の概略
リジンの必要量は成長期や病後の回復期のように体組織が増加する条件では多いですが、成熟後はその必要割合は減少します。
その理由の一つに、リジンは体内の代謝プールで再利用される割合が他の必須アミノ酸にくらべて多いことが知られています。
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